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清水和夫メールマガジン〜自動車大航海時代〜

2011年1月1日 第1号
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2010年パリサロンで見たフランスの戦略

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アジアは坂の上の雲

 新しい年が始まりました。毎年のことですが、少し前(過去)を振り返りながら明日はどうなるのか想いを巡らせて新年を迎えます。それでは2010年は自動車業界にとってどんな年だったのでしょうか。世界の自動車界とって大きな転換期となったことは間違いないと思います。「ルールが変わった」「パラダイムシフト」などと言われていすから。
 たとえば、2010年は「トヨタショック」から始まったといえるでしょう。誰もが信じていたトヨタ品質が崩壊したのです。この問題に乗じて理不尽なトヨタバッシング(日本車バッシングかもしれませんが)も報じられましたが、私は火のない所に煙りは立たないとと思っています。しかし、このトヨタショックは世界中の自動車メーカーにとって決して対岸の火事ではなかったでしょう。急速に拡大する自動車産業界に警告を鳴らしたといえます。
 また電気自動車(EV)元年として自動車史に残る年となったことも忘れてはいけません。先陣をきった三菱自動車と2010年末に正式発表した日産自動車のリーフは新しい時代を牽引することができるのでしょうか。日本では過熱しすぎたEV熱ですが、欧州では都市計画と共に新しい電気自動車への道筋を描いています。また破綻したGMが再生したことや中国の自動車販売台数が増加し、世界最大の自動車市場になったことも記憶に新しいと思います。

 私にとっても2010年はターニングポイントとなりました。例年ならアメリカのデトロイトショーから仕事始めを行いましたが、2010年は1月4日からインドのデリーショーを取材しました。初めてのインドはまだ大都市デリーしか取材していませんが、他のどの国とも違う異国情緒感を味わうことができたのです。ヒンズー教やカースト制など日頃あまりなじみのない文化に触れることができ、インド独自のクルマのニーズがあることを知りました。この国ではクルマは人々が生きるために必要な道具であり、雨風をしのげる屋根がついた安いことが求められていたのです。これはショックでした。
 5月〜6月はブラジルのリオデジャネイロ、中国の北京と上海を取材しました。太平洋を挟んだ南アメリカとアジアの大国で売れているクルマの対比に驚きました。夏にはインドネシアのジャカルタショー、秋にはタイのバンコックショーを取材し、アジアは決してひとくくりにできないと思ったのです。アジアを一言で言い表すなら「多様性」であると確信しました。
 こうして新興国の自動車ショーを取材したり、いくつかの現地工場を視察したことはとても勉強になりました。それまで閉塞感を感じていた日本の自動車産業の未来にまぶしい光が差し込んだと思ったのです。アジアの多様性はむしろ日本企業の持ち味を活かす場ではないのかと。坂の上の雲はアジアなのです。
 急成長するアジア市場は、自動車産業にとってエポックメイキングな話題であることは間違いありませんが、新技術や商品ではEVも大きな話題となりました。2010年はEV元年だったのです。そこで今回のメールマガジン第一弾ではEVで沸いた2010年10月のパリオートサロン(自動車ショー)を振り返ってみたいと思います。この自動車ショーから何を読み取ることができるのでしょうか。

EVで沸いたパリサロン

 プレスディ初日、突然会場が騒がしくなったのは、フランスの環境担当も兼任するジャン=ルイ・ボルロー国務大臣がオートショーの視察に来たからでした。同大臣はIEA(国際エネルギー機関、本部パリ)のブースで行われたカンファレンスに同席し、IEAはEV(プラグインを含む)が2020年までに2000万台、2030年には2億台、2050年には10億台まで増えると衝撃的な数値を発表したのです。
 2020年に2000万台のEVが地球上を走るというのは、はたして多いのか少ないのか想像しにくいですが、その頃の地球上の自動車保有台数が10億台(2010年現在で約9億台)を超えるなら、ゴルフ場で使うカートのようなマイクロカーまで含めるとこの数字は現実的かもしれません。
 IEAが示したEVの普及シナリオの根拠は2008年のG8洞爺湖サミットでした。このサミットで「2050年までにCO2半減」というビジョンが発表されました。IEAのブースにはもう一人、ルノー日産のカルロス・ゴーン会長が招待されていました。このコンファレンスで「2020年にEVで世界新車販売シェアの10%を占めたい」とEVへ積極的な姿勢を明らかにしたのです。
 フランスがEVに対して積極的な理由は、同国のエネルギー戦略が原子力中心のためです。ドイツが訴える再生可能エネルギーの風力や太陽光発電だけではEVのエネルギー需要に応えることができないと考えられています。そこでEV普及はフランスの国益とリンクしているのです。
 またフランスの都市計画はどこの国よりも進んでおり、EVを導入しやすいインフラ環境が整っていることも見逃せないでしょう。西のナント、東のストラスブールではパーク&ライドが普及し、町の中心地はトランジットモールで賑わっています。ちなみにトランジットモールとは公共交通機関(バス、トラム、LRT)と歩行者が空間を共用し、市街地を活性化させる施策です。
 フランスの都市計画が進むのは政府に強いリーダーがいるからだけでなく、フランスにはLOTI法と呼ばれる移動権が市民の重要な権利として定着しているためです。国家の都市計画を担当するのは前述のボルロー国務大臣であり、2008年にエコロジー・エネルギー・持続可能開発・国土整備大臣を兼務し、2009年からは海洋大臣、環境技術・気候関連交渉担当も兼務しています。サルコジ政権はボルロー大臣に権限を一元化したことで迅速な都市計画を実行してきいるのです。権限がバラバラな日本でも見習いたい政治主導ですね。
 次回はパリサロン前にインタビューできたダイムラー社のツェッチェ会長の話をレポートします。

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価格 1000円/月(税込)
配信開始日 2011/01/01
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