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メルセデス・ベンツ環境ワークショップ②CO2削減へ トラックからsmartまで

20080711

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クルマを動かすのに必要なエネルギーは、”重さ”と”速度”で決まる。

例えば人間がクルマで移動する場合、必要になるエネルギーは、”人とクルマの合計重量”と、”人(=クルマの速度)”で決まる。つまり、人が動くのに余計な重さが動いているというのが現状なのだ。クルマの使われ方として、乗車人数を考えると、乗車定員いっぱい乗っている事はほとんどない。おそらく平均乗車人数は二人弱だろう。少なくとも都市内の移動や通勤などに用途に限定すればさらに減り、一人に近づく。つまり、60kg程度のたった人一人を運ぶのに、約2tもの重さが動いているのだ。こう考えると、クルマってもっともっと小さくて軽くていいんじゃないかな?、と、直感していただけるだろう。

そんなコンセプトから生まれたのが、スマート。ダイムラーが時計会社のスウオッチとコラボレートしてMCC(マイクロコンパクトカー)という会社を作ったのが1994年。1996年のパリショーでのお披露目を経て、1997年に欧州で発売を開始したsmart for two(発売当時の呼び名はスマートシティクーペ) はその斬新なコンセプトとデザインから大きな話題となった。そして、その小さいながらも最大限の安全設計がなされている点が評価されセカンドカー/サードカーとして一部の層に愛され続けている。現在はスウオッチ社の手は離れてダイムラーの一ブランドとなり、smart for two は2代目になった。

このコンセプトが近年増々注目されてきている。およそ10年前に600cc3気筒ターボという日本では軽自動車の上限排気量にも満たないガソリンエンジンを、たったの長さ2メーター54センチのコンパクトボディに搭載した初代モデルがデビューした時は誰もが驚きを隠せなかったはず。その後、ディーゼル仕様も登場し、わずか排気量800ccのディーゼル仕様は1Lで100km走行可能な、1Lカーとして話題をさらった(CO2換算すると約88g/km)。いずれも車両重量はおよそ700kgだ。昨年発売された2代目スマートは、排気量は1000ccに拡大され、ボディも少し大きくなったが、CO2排出量はガソリン仕様で112g/kmと相変わらず優秀だ。もともと優秀なスマートになんとアイドリングストップとブレーキ回生エネルギーを有効活用するmicro hybrid drive、smart mhdまでラインナップされていて、CO2排出量は103g/kmまで低下する。さらに、引き続き初代と同じエンジンを搭載してラインナップされるディーゼル仕様は、ボディが大きくなったのにも関わらず88g/kmというCO2排出量をキープ。この値は、世界中で現行販売されている車両のなかでもっとも少ない値であり、イベント会場では、その88g/kmという高性能をもってCO2 championとステッカーをはった姿が誇らしげだ。

ところで、昨年のフランクフルトモーターショーではVWからup、トヨタからIQといったようにsmartを追いかけるコンセプトのクルマが矢継ぎ早に発表されている。ディーゼル、ハイブリッド、代替燃料、電気自動車、、、どれもがCO2削減には効果的でその最適な使われ方が期待されるが、このようなパワートレインからのアプローチだけでなく、クルマそのもののダウンサイジングは、どのパワートレインと組み合わせても有効な環境負荷低減アイテムなのだ。この組み合わせの例としてもスマートは一歩先んじている、というかてんこ盛り。量産車で存在する、ガソリン、ガソリンマイルドハイブリッド、ディーゼル、に加えて、試作車としては、ディーゼルハイブリッド、天然ガス、電気、まである。試作車を含むといえども、一車種でこれほど多くのパワートレインを持つクルマはそう他にはない。クルマに興味のないひともだれもが注目するデザインもあって、色んなプレゼンテーションには格好のクルマとも言える。さらに、電気仕様のedはまだ一般発売はされていないが、ロンドンでなんと100台もの台数がフリートテストされている。ちなみに、IQやupもディーゼル仕様は当たり前として、電気仕様も用意されるという噂もある。

しかしながら、ダウンサイジングは”百害あって一利なし”かといえばそうではない。やはり衝突安全性にはそれなりの設計が必要だ。私のまわりにはこのような衝突時の安全性を不安視する友人もいる。つまり、ダウンサイジングの障害の一つになっているこの安全性について、事実よりそのイメージが先行しているのがとても残念で、この悪しきイメージの払拭が急がれる。そのためにも、実にsmart はエコロジーコンセプトと同時にセーフティコンセプトから成り立っているという事を紹介したい。

smart の成り立ちである1990年に発表されたコンセプトカー”セーフティコンセプト”は、鋼鉄製の頑丈なトリディオンセーフティセルと前後のクラッシャブルゾーンから構成されるボディでパッシブセーフティを確保し、先進のアクティブセーフティ装置のESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)を採用するという画期的な安全設計がなされていたのだ。このように今から18年も前にも関わらずこの高い思想はさすが、メルセデス・エンジニアリングと言うしかない。このように十分な安全設計がされているのだが、さらなる安全性向上に衝突安全装置等の普及、標準装備化にも期待をしたい。トラック、バスなど万が一の衝突時には加害(相手は被害)が大きい車種には一刻も早い装着を期待する。技術的にはかなりのところまできているので、あとは経営陣の判断、あるいは行政の判断だけだろう。クルマの装備だけでなく、プローブ車構想など、ITS ( Intelligent Transport System ) を使った安全性確保も可能だろう。

ところで、今年の1月、インドでのモーターショーでタタ社が「ナノ」という低価格車を発表して話題を独占したり、日産・ルノー連合が、インドのバジャージ・オート社と合弁会社を作り、2,500ドルの低価格車を開発、販売するというように、最近コンパクトサイズのクルマの話題が多くなってきている。こちらは低価格車というコンセプトであるが、結果的にクルマのサイズのコンパクト化は加速するのではないだろうか。

ちなみにスマートのCMでは、"なぜ1Lの牛乳を買うのに、2Lのガソリンを使うの?"というコピーが印象的だ。さらに、” Open Your Mind ! ” と締めくくっている。同感。

モータージャーナリスト 長沼 要

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