河口まなぶ「アナログな車々間通信」



河口まなぶ
いまフランスに来ている。欧州に出張すると毎度思うが、やはりこちらの高速道路は至極走りやすい。今回はプジョーの新型207の試乗会で南仏のソレイズという場所にいるが、試乗ルート中の高速道路での走行はとても快適なものだった。
今回走行した高速道路(=オートルート)は片側2車線で、実勢速度は追い越し車線が大体130-150km/h、走行車線が110-130km/hという感覚。日本の高速道路と比べると数割高速となるわけだが、決して速度が高いからでなく、そこを走るドライバーのモラルがしっかりしているから快適に走れたのだった。
追い越し車線を比較的速いペースで走行したわけだが、そうして走行していると当然のように前走車に追いつくことになる。しかし日本の高速道路のように、いつまでたっても前走車が追い越し車線にとどまることがないどころか、追いついてくるこちらを確認した瞬間に追い越し車線を譲ってくれて走行車線に移るために、ほとんど減速すらする必要がないほどなのだ。
それでも時には前走車に近づくこともあるが、そんな時に前走車のバックミラーを見ているとドライバーがこちらの存在に気づいてくれるのを、ミラー越しの目の動きで確認することができる。そしてこうしたドライバーはすぐに道を譲ってくれる。
モラルが実にしっかりしているなぁと思う。自車よりも速いクルマが来た時には即座に譲るし、その逆もしかり…この感覚がほとんどのドライバーに備わっているのだ。
日本の場合だと、気が付いているのに譲ってくれない場合も多い。さらにいえば少し詰まった状態では、自分の前を走るクルマがいるのだから自分も追い越し車線にとどまる…という感覚で、結局数珠つなぎとなり速度低下がおこるわけだ。
欧州の高速道路でも当然ITSの普及はまだである。が、こうしたドライバーのモラルの高さによる交通のスムーズな流れは、まるで車々間での通信を行っているかのような効果すらあるように思える。そう、アナログ的なモラルの高さというものが、まだ実現せぬデジタルでの車々間通信に勝る関係を築いているのだ。別に前走車のドライバーとアイコンタクトをしているわけではないけれど、そうした感覚に近いモラルが欧州の高速道路にはある。
もし日本の高速道路において、欧州のようなモラルが徹底されたならば、それこそITS以前の段階でもう少し走りやすい道路になるようにも思えるのだ。

河口まなぶ氏 プロフィール
モータージャーナリスト。ミニバンよりはスポーツカーをこよなく愛し続ける1970年生まれ。
自動車専門誌を始め、webやTV、ラジオなど多方面で「クルマは走って楽しく気持ちよくなければいけない」と叫び続けている。
■オフィシャルブログ:「kawaguchi@manablog」






