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清水和夫「豊田市のITSへの取り組みの実際」

20070131

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清水和夫

愛知県豊田市を本拠とするトヨタも今年の11月から実証実験を開始した。ところで愛知県は北海道を抜いて死亡率では最も危険な地域となった。この不名誉な事実はトヨタの関係者に大きなショックを与えている。そこで、事故のないクルマ社会の実現にむけた対策が急がれることになった。

今回豊田市で行われる実験はUTMS協会(社団法人新交通管理システム協会)が中心になって行っている。実際の作業は同協会の安全支援システム分科会の下部組織にあたる愛知県DSSS検討作業部会が担当した。

今回実証実験する具体的な内容は信号情報提供と規制情報提供だ。前者は信号機がある交差点での出会い頭の事故を防ぐもの。信号機からの情報を光ビーコンでクルマに送り、ドライバーが十分なブレーキ操作を行っていないと判断すると、カーナビで「音や図形」で知らせる。今回はモニターの50台に実験用車載器を搭載し三カ所の交差点で実験が行われる。

同じようなシステムを信号機のない交差点でも行っている。道路標識に従った規制情報をカーナビで喚起するのである。このような取り組みは、技術的にはもっと広範囲なところまで対応できる。例えば、朝夕の子供の通学路では、自動的にクルマの速度を規制することも可能であり、人とクルマの新しい秩序をITSによって構築することが可能だ。

UTMSはユニバーサル・トラフィック・マネージメント・システムの略であり、非営利団体として発足したUTMS協会は警察庁のITS研究会と理解できる。国土交通省との棲み分けは高速道路を同省が担当し、国道は警察庁が担当する仕組みだ。今回は市街地道路なので管轄は警察版ITSとなるわけだ。

ところで、豊田市はトヨタ自動車の好調さを受けて、人と物資の移動で賑わっている。急速に発展した豊田市にも大きな問題がのしかかる。昨年市町村合併の折に、山間部の地域が豊田市に組み込まれた。都市部と山間部という極端なクルマ社会を持ってしまった面積は二倍になっても人口は37万人から5万人しか増えていない。過疎化する山間部の交通インフラをどのように考えるべきなのか、豊田市はある意味で日本の縮図だ。

世界のトヨタ自動車の本拠地の交通事情を知るために、新型レクサスLS460で郊外まで足を伸ばしてみた。都市部から15分も走ると豊田市には豊かな自然があったことに気がつく。紅葉の季節は終わったものの、足助という地域では見事な紅葉が愉しめた。しかしこの場所に行くには片側1車線の三桁国道を北上する。途中で遭遇した右カーブ出口の信号機。手前に注意看板があったが、ご存じ日本は交通安全の看板と消費者金融の看板が乱雑するから本当に重要な看板は気がつかない。あわてて急ブレーキを踏むが、最新のLSの安全技術もこうした道路環境では意味がない。

都市部は無秩序に立てられた電信柱、信号機、のぼり旗。特に交差点では立て看板とのぼり旗の多さに圧倒される。交差点は安全確認して通過するところであるが多くの看板に気をとられていると信号機などを見落としてしまうのではないだろうか。ITSの取り組みの前に、安心して落ち着いて走れる道路環境(景観)を取り戻すことが先決だと思った。

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清水和夫氏 プロフィール

モータージャーナリスト&レーシングドライバー。

1972年にラリーデビュー以来、プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。
最近はクルマ好きが考える安全と環境をライフテーマとして活躍中。

主な著書
「クルマ安全学のすすめ」 「燃料電池とは何か」 「ITSの思想」 以上NHKブックス
「ディーゼルこそが地球を救う」 ダイヤモンド社

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