清水和夫「BMWのガソリンエンジンの環境戦略」



清水和夫
昨年BMWはガソリン直噴のターボエンジンを発表して話題となった。シルキー6と呼ばれてきたBMWお得意のストレート6のエンジンを全面改良し、最新の直噴エンジンに仕立てたのだ。しかもターボチャージャーで過給し実用的でトルクフルな性能を実現している。
このエンジンは3シリーズのクーペボディに搭載されてデビューしたが、すぐにセダンにも搭載された。エンジンのスペックを見てみると、直噴の直列6気筒ツインターボエンジンは最高出力306ps/ 5,800rpm、最大トルク40.8kgm/1,300-5,000rpm。
このスペックを見て専門家は驚きの顔を隠せない。というのは、1,300回転という低回転で最大トルクを得ているからだ。ディーゼルエンジンよりも低速型のエンジン特性を実現している。ターボチャージャー本体は日本の三菱重工製との共同開発したもので、タービンの最高回転数は20万回転。大きさは直径は4cmと小型だ。
このエンジンの開発を指揮したクラウス氏は「今後のBMWのガソリンエンジンのコア技術は直噴となります」と言い切る。直噴エンジンは精密に噴射できるスプレーガイド方式のピエゾインジェクターが鍵を握るという。
もともとガソリン直噴はドイツでは歴史が古い。1954年に開発されたメルセデス・ベンツ・300SLは航空機技術を応用して世界で初めてのガソリン直噴を実用化した。そしてこのエンジンはルマン 24時間レースでも大活躍した記録が残っている。ガソリン直噴といえば、リーンバーン(稀薄燃焼)技術と結びつき、燃費向上が目的と思われているが、パワーを絞り出すことにも効果的だ。
N54型と呼ばれる直噴ターボはN52型(自然吸気の6気筒)のマグネシウムブロック、アルミニウムクランクケースとは視覚的に似ているが、ターボ化に伴いブロックはアルミ製。ボアは85mmから84mmへと小さくなっている。ターボなどの補記類を含めると重量は30kg重くなっているが、同じトルクを発生するV8エンジンと比較すれば40kgも軽いというのが、BMWの言い分だ。
ターボの過給圧は1.6バール。ディーゼルターボの2.5バールと比べると低い。一方、燃量噴射の圧力はガソリンエンジンが50~200バール。ディーゼルは1600~2000バールと極めて高い。これは使う燃料の違いである。ディーゼルは圧縮比が高いので、噴射圧を高くする必要があるし、燃えにくい軽油を使うので、ブースト圧を高くできるわけだ。ガソリンエンジンではあまり高いブースト圧はエンジンが異常燃焼(ノッキング)を起こし、不具合が発生してしまう。ガソリンエンジンの噴射回数は「プリ、メイン、ポスト」の3回であるが、ディーゼルは4~5回と多い。
BMWは自然吸気の直噴エンジンもデビューさせた。いままではバブルトロニックという画期的な技術がBMWのコア技術であったが、今後は直噴技術と併用するとのことだ。直噴は燃料の品質に厳しく、さらに排出される窒素酸化物の浄化も難しい(リーンバーンの場合)。従って各国の排気ガス規制や燃料の品質を考慮しながら世界戦略を構築することを考えている。環境問題を考えるとガソリン直噴が今後BMWの重要なエンジン技術となることは間違いないだろう。

清水和夫氏 プロフィール
モータージャーナリスト&レーシングドライバー。
1972年にラリーデビュー以来、プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。
最近はクルマ好きが考える安全と環境をライフテーマとして活躍中。
主な著書
「クルマ安全学のすすめ」 「燃料電池とは何か」 「ITSの思想」 以上NHKブックス
「ディーゼルこそが地球を救う」 ダイヤモンド社

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