清水和夫「迫る気候変動、07年デトロイトショーで何が見えたのか? 第1弾」



清水和夫
新年に開催されるアメリカ・デトロイトショーは各メーカーの様々な思惑が錯綜していた。安全と環境はこれからの自動車の重要な土台となっていることは間違いないが、「持続可能なクルマ社会」に向けた新しい環境技術には積極的な取り組みが行われている。ところで、最近は自動車ショーにも変化が見える。例えば、毎年恒例のデトロイトショーにさきがけ、カリフォルニア州のロスアンジェルスでLAショーの人気が高まってきている。カリフォルニア州だけでも日本一国と同じ規模の 人口と自動車を抱えるだけに、日本メーカーはカリフォルニアを重視してきている。その反面、保守的な地域として知られるミシガン州デトロイトは、アメリカのビッグ3の本拠地であるだけに、大きなSUVやトラックが主流のショーであった。しかし、環境問題がクローズアップされるとデトロイトショーにもコンパクトな環境に優しい自動車が発表されるようになった。もともと環境に意識が高いカルフォルニアと対当するようになってきたのだ。
各国のエネルギー事情で自動車のパワープラントが決まる
自動車メーカーにとってこれからの世界戦略は自動車先進国(北米、欧州、日本)とBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)の発展途上国に分けることができる。これ以外の地域も存在するが、地球規模の格差社会に自動車が益々普及するようになってきたのだ。もちろん地域によって好まれる自動車のスタイルが異なるし、その国のエネルギー事情でエンジンの特性が決まるわけだ。
日本では乗用車がガソリン、商業車が軽油(ディーゼル)と決まっているが、欧州では乗用車でもガソリンと軽油の二種類の燃料が選べる。しかし、地域が変わると、例えばトウモロコシなどの植物から自動車の燃料を作る国家計画を推し進めるブラジルではバイオマス燃料が主力だ。植物からエタノールを作り、ガソリンと混ぜて利用する燃料が急速な勢いで普及している。ちなみにバイオマス燃料が地球温暖化に貢献できる理由は、カーボンフリーと呼ばれる二酸化炭素のサイクルを持っているからだ。バイオマス燃料をエンジンで燃やすと二酸化炭素が排出されるが、植物はその二酸化炭素を再び吸収するから大気に滞留しないというメリットがある。こうしたバイオマス燃料は地域性が高いので、世界の主流になるには限界があるし、行き過ぎたバイオマス燃料政策は食料問題も引き起こしかねない。スウェーデンやアメリカの自動車メーカーはE85と呼ばれるバイオマス燃料(エタノール85%をガソリンに混ぜたもの)を使うコンセプトカーを発表しているが、地域性の強い燃料であることを理解しておくべきだろう。
ところが欧州では軽油を使うディーゼル乗用車に人気が高い。そこで欧州メーカーはいままでディーゼル乗用車の人気がなかったアメリカ市場に積極的に乗りこむ構えを見せていた。ディーゼルの燃料となる軽油は、今後石油から離脱し、天然ガスやバイオマスから人工液体燃料を作る研究も欧州では進んでる。前者はGTL(Gas to Liquid)、後者をBTL(Baiomas to Liquid)と呼んでいる。BTLはバイオマスからエタノール燃料を作るプロセスとは根本的に異なり、人工的に作られた液体燃料を意味している。GTLとBTLは同じ液体燃料を異なる素材から作るわけだ。
こうしたバイオマスE85(ガソリンエンジン用)やGTLやBTL(ディーゼルエンジン用)は、お互いに重要な共通点を持っている。それは石油に頼らないと言う点が重要だ。アメリカのブッシュ政権
は「輸入石油に頼らない自動車戦略」(Freedom Car)を持っている。バイオマスE85が全米で推し進められる理由はこうしたエネルギー事情が考えられるからだ。

清水和夫氏 プロフィール
モータージャーナリスト&レーシングドライバー。
1972年にラリーデビュー以来、プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。
最近はクルマ好きが考える安全と環境をライフテーマとして活躍中。
主な著書
「クルマ安全学のすすめ」 「燃料電池とは何か」 「ITSの思想」 以上NHKブックス
「ディーゼルこそが地球を救う」 ダイヤモンド社






