岩貞るみこ「クルマ椅子に厳しい日本の道づくり」



岩貞るみこ
先日、久しぶりにクルマ椅子を押して歩きました。十代のころからバイクで走り回っていた私は、バイクで転んで脊髄損傷をした友人が多く、クルマ椅子に接する機会は平均的日本人よりは多いと思うのですが、それでも押して歩くということはあまりありません。一口に「クルマ椅子利用者」と言っても、その状態はいろいろです。足だけを損傷した人は手も腹筋も損傷した以外の足も使えますが、脊髄損傷の場合は、頚椎、胸椎、腰椎と、その損傷の位置によって、動かせる範囲がまったく異なるわけですね。
先日、いっしょにご飯を食べに行った男性は、頚椎損傷でした。手を動かしにくいのもあるのですが、首から下を動かすことができないので腹筋が使えない。腹筋が使えないと上体を支えられないわけです。駅で待ち合わせをして食事に向かうあいだ、腹筋を使えない人の苦労を間近で経験しました。
道ってこんなにうねっているのか!
歩道が狭いのはさておき、まず、歩道が車道側にナナメに傾いているんですね。もうそれだけでまっすぐに進めない。押す側もコツを要します。ちょっと向きを変えようものなら、逆バンク状態になり、あっという間に上体は遠心力で傾き、ひどい場合はずり落ちそうになってしまう。押している側は冷や汗ものです。
上り坂は押すのがキツイし、下り坂は転がりすぎてこれまた怖い。特に下り坂は、彼は上体が不安定である以上に、足でふんばることもできないので、油断するとクルマ椅子から前方に転がり落ちてしまいます。急な下り坂は後ろ向きにして進む、ということも初めて知りました。
補助する側でこれなのですから、これを自分ひとりでやるとどうなるのか? 腕力、握力の十分にある人ならともかく、高齢者になってきたら車輪の動きを手の力で止めることはむずかしく、クルマ椅子が爆走するのは避けられないでしょう。
クルマ椅子なんて関係ない。そう思っている人は多いようですが、でも高齢化が進む日本。すぐに自分も仲間入り。私は今回の経験で、自分にはクルマ椅子は無理と判断し、クルマの免許証を返したあとは電動椅子=シニアカーを使おうと決心した次第です。
今後の日本の道作りに望むもの。それはシニアカーが動き回りやすい歩道の整備!
よろしくお願いします。

岩貞るみこ氏 プロフィール
国交省スマートウェイ検討員他委員を兼任。
JAF理事。
イタリア在住経験があり生活者の視点で都市交通を分析。
著書
「思いっきり!イタリア遊学」(立風書房)
「もういちど宙(そら)へ~沖縄美ら海水族館、人工尾びれをつけたイルカ フジの物語」(講談社)






