河口まなぶが水平対向ディーゼルにのった!ガソリン車とくらべて!?



ついにこの日が来たか…と思わず深い感慨を覚えたのは、以前から噂されていたスバルのボクサー(水平対向)・ディーゼルをついに試す時が来たからである。
ボクサーを手がけるのはスバルとポルシェの2社だけで競争相手が限られるため、ガソリン仕様ですらメジャーな型式のエンジンに比べ技術革新で困難がつきまとう。そんな背景ゆえボクサーをディーゼル化することはイコールで、世に存在せぬものをゼロから作り出す新たな挑戦の扉を開くことでもある。
スバルがディーゼル・エンジンに関して後発となった理由はそこにあるが、後発であるがゆえに彼らの強いこだわりを表現することができた。なぜなら今回送り出されたエンジンはディーゼルとしては後発である一方で、ボクサーという他にない形式を用いるので、世界初にして世界唯一のディーゼル・エンジンという価値を持つからである。
世界中のどこにもないエンジンを作り出すことに挑戦し、わずか3年程度の短期間でスバルはディーゼルを市販化した。そして今回このエンジンをレガシィに積み、欧州で3月から販売を始める。それが今目の前にあり、これから試そうというのだから嫌がおうにも気持ちは昂る。
形式名EE20と呼ばれる1998ccの水平対向4気筒ディーゼル・ターボは、長年ガソリン仕様のボクサーで培われた技術とノウハウを活かして完成された。
最大の特徴はガソリンの2.0LであるEJ20に比べ、アルミ製となるシリンダーブロックのボアピッチを3.0LのEZ30並みに狭めボア×ストロークも86×86mmとスクエアストロークにした結果、全長を61.3mmも短くコンパクトにしたこと。また構造的にもセミクローズド・デッキを採用するなどSTI等に搭載されるEJ20ターボで得たノウハウを活かし、大きな力がかかるディーゼル燃焼に耐える剛性を確保する。一方ディーゼルの命であるコモンレールシステムはデンソー製のソレノイド・インジェクターを使い燃料を180Mpaまで高圧にして噴射するタイプを用い、ターボはIHI製の可変ノズルターボを排ガス浄化装置に直付けして環境性能とレスポンスの良さを実現。排ガス性能はユーロ4レベル、CO2排出量は148g/kmを実現した。そして重量もEJ20ターボと同等としている。
結果、最高出力150ps/3600rpm/最大トルク35.7kgm/1800rpmを発生するこのエンジンは、ガソリンよりレブリミットが低く低速トルクが太い特性に併せ、通常よりもハイギアード化された専用の5速MTと組み合わせられ4輪を駆動する仕組みだ。
感慨を胸に早速スターターボタンを押す。始動時にはさすがにディーゼルと分かる振動と音が伝わるが、それ以外では車内にいる限りディーゼルをほとんど意識させない。
アクセルを踏み込む。すると明らかにガソリン仕様のボクサーとは異なる加速が始まる。
回転の上昇はガソリン仕様に比べ穏やかだが、トルクは低回転から明らかに太く、滑らかな回転を保ったまま勢いが増していく。最大トルクの発生回転数が1800回転と低く走り出しから力強さが生まれているため、回転の伸びやキレ味はガソリン仕様に譲るが、その分こちらには豊かなトルクの波にどこまでも押し出される独自の気持ち良さがある。また驚きはエンジン自体の静粛性の高さで、例えば高速巡航時に4速へとシフトダウンし高回転を用いても車内の騒音は高まらず、遠くで心地よいサウンドが響く程度だ。
ガソリン仕様よりも「滑らか」「力強く」「静か」で、ディーゼル化によってボクサーのメリットがガソリン仕様以上に活きた感がある。
もちろん他の直列4気筒ディーゼル・エンジンと比べてもその印象は顕著に異なる。他では振動を抑えるためバランサーシャフトを備えるが、ボクサー・ディーゼルはそれを必要としないほど素性が良い。しかもバランサーシャフトを備えた直4ディーゼルよりも遥かに振動が少なく滑らかさが際立つ上に静粛性でも上を行く。このためディーゼルならではの力強さも上質に感じるほど。その意味では直4ディーゼルに比べ、1ランク上の質感を持った魅力的なエンジンともいえるのだ。
同時にエンジンが軽量コンパクトゆえ、他の直4ディーゼル搭載車でありがちなガソリン仕様からディーゼル仕様にエンジンを換装した時の、エンジンが重くなるがゆえのハンドリングの悪化がない。むしろボクサー・ディーゼルを搭載したレガシィは、2.0LのガソリンNAである2.0R同等のしなやかなハンドリングが実現され、その上にディーゼルのパワフルさが加わり爽快な味わいが生まれている。また初めて採用した電動パワステのフィールが油圧式よりも優れており、最近のトレンドである軽い操舵感ながらインフォメーションもしっかり…という理想的な感触を持つ。結果その走りはレガシィのベストといえるものに仕上がっていたと報告できるほどだ。
そう考えると遅れてやってきた世界初にして世界唯一のボクサー・ディーゼルは、レガシィはもちろん今後のスバル車に、新たな価値をもたらすパワー・ユニットだと思えた。
現在、自動車は環境への対応を迫られると同時に、いかに自動車本来の魅力(exパワー、スピード、楽しさ、気持ち良さ)を盛り込み両立かするかが求められている。つまり環境に対応するだけでは商品として魅力的とは言い難い。そう考えると今回試乗したレガシィのボクサー・ディーゼルは環境への対応と同時に自動車本来の魅力を持ち、その上でボクサーの個性や味までをも手に入れた、高い商品性を感じさせる1台と思えたのだった。

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