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メルセデス・ベンツ環境ワークショップ①CGI ガソリン直噴

20080708

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メルセデス・ベンツの最新技術を紹介する「環境ワークショップ」が行われた。まずはガソリン直噴リーンバーンエンジン搭載のCGIを試乗した。


それでは、エンジンの専門家でもある長沼要の【ガソリン直噴の基礎知識】を読んでお勉強しよう。

M.Benzが1950年代に世界で始めてクルマへ搭載したものの一旦消滅、そして現在再び動きがみえる。その他欧州勢ではAudi, VW, BMWが積極的。日本勢は三菱、トヨタ、日産が90年代に一気に拡大し、今はホンダやMazdaも参入するが、勢いは微妙。そして、ついにポルシェが参入!・・・という今とてもホットなエンジン技術は一体なんでしょう?! そうです、ガソリン直噴(直接噴射)技術です。では、いったいこのガソリン直噴って、なにがいいの?どうなってるの?という点を簡単に説明してみます。

ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、エンジンだけでなく電気自動車も燃料電池車もハイブリッド車も水素自動車も、目指している方向性は同じで、”出来るだけ少ないエネルギーで、そのエネルギーが再生可能であればなお良く、有害物質を出さない事”、なのだ。そこで、どんなエンジンやシステムもこの目標に向かって技術開発をすすめているのだが、一気にはなかなかいけない。そこで、ちょっとずつでも、今可能な技術を精一杯使って、目標へ向かっている。そのガソリンエンジンの進化の一つが直噴技術だ。

結論から言うと、効果は主に以下の3つある。

・出力向上と効率向上(=燃費低減=CO2排出量低減)の両立
・始動時エミッション(有害物質)の低減
・低負荷領域(ゆーっくり走っている時など)での効率向上の可能性

では、どうして直噴だと、これらの効果があるか?!を解説してみよう。

その前に、ガソリンエンジンの燃焼の基本もおさらいしておく。ピストンが上下するレシプロエンジンも、ローターが編芯回転するロータリーエンジンも次の4行程から成り立っている。吸気→圧縮→爆発(膨張)→排気だ。吸気というのは、空気と燃料を燃焼室に貯め込む行為。圧縮は、その混合気(空気と燃料)を文字通り圧縮して温度と圧力を上げること。爆発とは、スパークプラグで作られる火花をキッカケに燃焼(燃料と空気中の酸素が燃焼という化学反応をすること)を行うこと、と同時に体積が膨らむこと。そして、排気とは、燃焼で化学変化したガスを排出すること、となる。ちなみに、この排出されるガスには、燃料の燃え残りである炭化水素(HC)、不完全燃焼でできる一酸化炭素(CO)、高温下で空気中の窒素と酸素が反応してできる窒素酸化物(NOx)が微小に含まれていて、有害物質なのでその排出量が規制されている。

さらに構造もおさらいすると(レシプロエンジンの場合)、上下に動くピストンと、シリンダー、そしてヘッドという3つの部品で囲まれた空間を燃焼室と呼ぶ。ヘッドには空気を吸ったり吐いたりするバルブや火花を飛ばす点火プラグがついている。ピストンが下がる事で注射器のように空気を吸い込み、その後、燃料を噴射して混ぜ合わせる。燃料を噴射するところに直噴と一般的なポート噴射の違いがある。一般的なポート噴射の場合は、吸気バルブに入る前の吸気管部分に噴射弁が装着されていて、そこで燃料を噴射して空気と混ぜ合わせる。しかし!直噴は点火プラグなどと同じようにヘッドに装着されている噴射弁から燃料を噴射し、燃焼室内で空気と混ぜ合わせる、のだ。

ではいよいよ、直噴だとなぜ第一の効果(出力向上と効率向上の両立)が得られるのか、について。ガソリンエンジンは圧縮比(設計時に決まる)という値を高めるほど効率がよくなる。しかし、ノッキングというやっかいな奴がいて、なかなか上げられない。一般的な数値は10前後だが、直噴にすると12前後まで高める事が可能で基本的な効率が高まる。なぜなら直噴の場合、燃料を液体のまま燃焼室に噴くため、その気化熱で空気が冷えるので、ノッキング限界が高まるのだ。と同時に、空気が冷えるということは、同じ排気量だと5%ほど多くの空気を吸う事が出来て、その分多くの燃料が入れられて力が多く出せる。さらに先ほど説明したノッキング限界が高くなるということは、点火時期もより進める事が出来(出力・効率に効く)、あわせておおよそ10%強は大きな力を出せる。さらにさらに、ターボやスーパーチャージャー等の過給器との相性もバッチリなので、より排気量あたりの出力(比出力といいます)を高められる。このような理由で、一般的なガソリンエンジンに較べ、同じ出力が、より小さいエンジンで作り出せ(総じて大きいエンジンより小さいエンジンのほうが効率がよくできる)、結果的に効率が高くなり、燃料消費量が減って、燃費向上=CO2排出量が減るというわけ。

では、次に第二の効果(始動時エミッションの低減)について。ガソリン車の排ガスがクリーンなのには、触媒が大きく貢献しているのだが、化学反応を促進する役目を持つ触媒というものは、冷えている時は全くなにも働かない。ただの筒だ。しかし、排ガスはエンジン始動と同時に発生する。さらに悪い事に、HCやCOは冷えている時(を如何に少なくするか)が勝負どころ。そこでも直噴は有利。直噴では、燃焼室に直接噴くので、できるだけ壁(シリンダー)などに付かないようにして、燃えないで無駄になる(=ただ未燃焼ガス=HC としてでてくる)燃料を少なくできる。最近発表されたポルシェのDFIなどは、それ専用にピストン設計をしていて、気を使っているのがよく分かる。さらに、噴くタイミングも自由自在に、回数と量を制御できるので、わざと排ガス温度を上げるために、主噴射に加え、排気行程に燃料を噴射することだって原理上は可能となる、というかやっている。そうやって、一秒でも早く触媒を活性化(温度を高める)しようとすることも、直噴のほうが得意で、始動時のエミッションが低くなる。

さて、では第三の効果である(低負荷領域(ゆーっくり走っている時など)での効率向上の可能性)について続けよう。一般道をスーと走っているときのように、出せる力のほんの一部しか必要でない時は、一般的なガソリンエンジンでは吸い込む空気と燃料を少なくして力を絞っている。そう、だから、アクセルペダルの事をスロットル(=絞り)とも言う。このように、空気と燃料を絞って運転するときはイッパイイッパイ力を出す時に較べて効率が良くない。その理由の一つはポンピングロスといって、細いストローで飲み物を飲む時にとても吸う力が必要なのと一緒で、空気を吸う時に入り口を絞って量を減らすものだから、この抵抗が無駄になる。そんなこんなで、イッパイイッパイの時の効率が最高で40%くらいだとすると、10%程度までと1/4程度も落ちる事もごくふつう。ちなみに、アイドリングは仕事をしないので、0%だ。だから、ぜひ無駄なアイドリングはぜひとも止めて頂きたい。

このように、ちからの一部しか必要ない時の効率を上げるために、空気だけはたくさん吸って、燃料だけを少なくする燃焼方法(リーンバーンという)があるのだが、ここがガソリンエンジンの苦手な部分。そこで最新の高度な直噴技術(もちろんピストンとか全体設計が必要ですが)を使うと、その可能性が広がる。そして晴れて、ガソリンエンジンの苦手な、力を出さない時の効率を上げる事ができ、燃費の向上=CO2排出量の低減、が可能となる。ところが、リーンバーンにはNOx処理という課題がが存在する。そのため、このところの直噴は、最初の二つの効果だけを期待するストイキ燃焼方式がどちらかというと主流になってきている。そして、市場によってはリーンバーンを採用したりと、カーメーカーは車種や仕向地に応じて仕様をかえるケースが多くなってきている。日本市場に入ってきているBMWの直噴などは、ストイキ燃焼を採用するが、ピストン設計とかも十分成層リーン対応で、その旨の発表もしている。たしか欧州ではリーンバーン仕様もある。M.Benzも欧州ではリーンバーン仕様を発表している。(なぜなのかは”おまけ”にて)

さて、直噴の簡単(?)な説明ということで、このような感じになりますが、分かって頂けたでしょうか?これらのメリット以外にも将来技術のHCCI(M.BenzのDissoto)には不可欠だとか、まだまだまだまだふかーい話はあるのですが、止めときます。少し興味を持たれた方はどんどん、質問など、(注意していますが、もしあれば)間違い修正も含めて、ご意見頂けたら幸いです。最近、CO2削減というと、ディーゼルの話題になりますが、このようにガソリンも頑張っているのです。

最後になりますが、じゃあなんでいままであまり一般的じゃなかったの?という疑問を持たれると思います。おそらく一番の理由はインジェクターを作るのに高度な加工技術が必要、品質管理が困難、噴射圧力が高い、燃料の性質に敏感、などなどが、あり、コストの関係が大きく(高くて)採用されてこなかったのでしょう。しかし、最新コモンレールディーゼル技術の発展に伴って、高精度、高品質なインジェクターを手の出せる価格で作れるようになったのでしょう。それでガソリンも直噴になってきています。市場に出回るガソリンの質の問題はまだありますので、直噴が導入される地域はまだ先進国に限られているようです。

ところで、理屈はともかく、最近最先端の直噴ガソリンエンジン搭載車、M.Benz、Porsche、早く乗ってみたいです!なんて。。。

おまけに各社の呼び方一覧と、リーンバーンとNOxの関係を。

Audi FSI
BMW HPI
Daimler CGI
Honda i-VTEC I
Mitsubishi GDI
Mazda DISI
Nissan DI-G
Porsche DFI
Toyota D4
VW FSI

リーンバーンという燃焼方式は、NOx(窒素酸化物)の発生が弱点となる。なぜ弱点となるかは、ガソリンエンジンの排ガス浄化になくてはならないもの、3元触媒と空燃比制御、について説明が必要だろう。ガソリンエンジンの基本となる燃焼方式は理論混合比(ストイキと呼ぶ)といって、燃料に対して必要となる空気の量を多くもなく、少なくもなく、一定の割合(ストイキ)にする方法が採用されている。この方法だと、NOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素) といった、有害三兄弟?を一緒に退治できる三元触媒が有効に働き、エンジンから出てくる有害物質をとてもきれいにできる。70年代に始まり、どんどん厳しくなる排ガス規制に対して、実は、この3元触媒と燃料と空気の割合を制御する技術の進歩がとても進化してきて、対応してきているのである。

ところが、リーンバーン(文字通り、燃料に対して空気が多い)では、排ガス中に燃焼反応に使われない空気(酸素)が余分に残っていて、3元触媒が正常に働かなくなる。そのため、別なNOx処理触媒が必要になる。こうなると、コスト増にもなり、効率向上(=燃費低減=CO2削減)とコストバランスが微妙なことになる。もっとも、理論的には、リーンの度合いをとてもリーンにするとNOx発生は抑えられるので、後処理なしでもいけるじゃないか?という考えがあるのだが、その”とてもリーン”で安定して燃やすというのがかなり現実的には難しいことなのだ。

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