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m21コラム 清水和夫「自動車の安全性 A trial to survival」

20080918

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                 ”安全性確保の歴史”

つい最近まで安全装備の三種の神器と言われた「ABS、エアバッグ、シートベルト」はいまでは"付いていて当たり前"の装備となった。こうした技術は'60~'70年代にすでに基本アイディアは生まれていたが、シートベルトを例外とすれば、本格的に実用化したのはつい最近のことだ。

ABSの機能はコンピューターの進化とともに高度化し、信頼性が飛躍的に向上し、低価格化が進んだ。ブレーキの踏み過ぎでタイヤがロックするのを未然に防ぐABSは、トラクションコントロールと組み合わされ、いまではESP(自動安定装置)へと進化し、加速中も減速中も姿勢を崩すリスクが下がった。ABSだけでは事故が減らなかったという教訓が活かされたと言っていいだろう。昨今、こうした状況を受けて、スーパーカーから軽自動車までにESPが採用されるようになったのだ。

'05年の東京ショーに出品されていたレクサスLS。現在のセルシオの後継車となる。当然万全の安全装備を完備してデビューすることだろう。

                 
                 ”難しいエアバッグの制御”

エアバッグはどのような進化しているのだろうか。もともと火薬で展開させるエアバッグは20年近い歳月をかけて、1/100秒単位での制御が可能になった。

制御は難しい。バンパーが傷つくくらいの軽衝突でエアバッグが展開したら大変だ。ベルトだけでも十分乗員を保護できる軽微な衝突にもかかわらず、エアバッグの火薬でかえって顔に火傷を被ることもありえるし、クルマの部品としては珍しいたった1回しか機能しない仕掛けだから、一度作動すれば交換しなくてはならず、修理代も高くつく。ユーザーはエアバッグが開いたことに「付いててよかった」と安堵する面はあるかもしれないが……。

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                 補助的かつ受動的安全装備であるエアバッグ。
                     緻密な制御が求められる。

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                   乗員の乗るキャビンは強く、
                   エンジンルームやトランクは
                   むしろ潰れることでエネルギーを
                   吸収することを求められる。

日本と欧州ではエアバッグをSRS(補助拘束装置)として理解しているから、シートべルトや衝撃吸収構造のボディで乗員を保護しきれないほど大きな衝撃が加わる場合に作動する(米国は法規の関係でシートベルトの代用品という考えもある)。だからと言って、センサーの作動点をもっと強い衝突に限定すると、肝心な時に作動しないリスクが高まる。事故と言う不測の事態の中で、いつ展開させるのがベターか、まさに神のみぞ知るタイミングをセンサーとコンピューターだけで決定しなければならないのだ。


                   ”多様な進化と絶対真理”     

乗員の体の大きさやポジションを検知して二段階に爆発するスマートエアバッグも実用化されはじめた。同時にシートベルトも進化した。衝突時に拘束力を高めるため、80mmくらいベルトを巻き込むプリテンショナーベルトも火薬の爆発ガスの力を利用している。さらに、最近は何度も使える電動プリテンショナーベルトも実用化されているのだ。

ABSをコアとしたESPの技術は、クルマの安定性確保だけではなく、人間のミスも少しとはいえカバーするようになった。しかし、どんなに優れた予防安全策でも防げない事故はある。これに対処するには、衝突安全性を高める以外に方法はない。つまるところは"ボディのエネルギー吸収容量とキャビンの生存空間の確保"だ。ボディの前後部分が潰れることでエネルギーを吸収しつつ、キャビンは絶対に潰さないこと。それを達成するためには、軽量で頑丈なボディを作ることが求められるのだ。

エアバッグやシートベルトなどの拘束装置は、もちろん本当に必要なタイミングで介入しなければならない。しかし、それ以前にまず"いいボディ"という土台があってのものだ。安全の基本を決める真理は決して変わらないのだ。

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清水和夫氏 プロフィール

モータージャーナリスト&レーシングドライバー。

1972年にラリーデビュー以来、プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。
最近はクルマ好きが考える安全と環境をライフテーマとして活躍中。

主な著書
「クルマ安全学のすすめ」 「燃料電池とは何か」 「ITSの思想」 以上NHKブックス
「ディーゼルこそが地球を救う」 ダイヤモンド社


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