m21コラム 薮下正三「チャイルドシート不使用の危険性を検証する3つのテスト」



子どもの乗車状況の実態
チャイルドシートについては、JAFと警察庁の2008年合同調査から、子どもの乗車状況を見ると、「チャイルドシート使用」が46.9%、車両の座席に「そのまま着座」が33.7%、保護者による「抱っこ」が10.5%、体格に合わない「大人用ベルト着用」が5.5%。ぉい装置があるのに「不使用のもの」も3.4%ありました。特に保護者の「抱っこ」については、乳児期に多く21.3%。「そのまま着座」は、幼児期の34.8%、学童期の52.7%とこちらは年齢層が高まるに連れて増加する傾向にありました。JAFユーザーテストで、「抱っこ」や「そのまま着座」など、「チャイルドシート不使用の危険性を検証する3つのテスト」を実施しました。
「抱っこ」による拘束力の限界テスト
まず、多くの保護者が「抱っこ」でも子どもを守れると誤解していることから、「抱っこ」による拘束力の限界に挑戦しました。このテストは、チャイルドシート評価試験用の「ECE座席」を使用。3点式ベルトを着用した複数のモニターに子どもダミーを「抱っこ」させ、それを前方に牽引し、どれだけ持ちこたえられたかの限界値を計測したものです。
その結果、女性モニターの拘束力は44~57Kgf。男性モニターの拘束力は53~115Kgfでした。但し、この数値はあらかじめ意識したモニターが頑強なダミーを「抱っこ」した場合の拘束力であって、身体の柔らかい実際の子どもや不意を襲われるような事故の際、果たしてこれだけの数値が残せるかどうかは疑問です。

写真1 「抱っこ」による拘束力の限界に挑戦する牽引テスト
「抱っこ」や「そのまま着座」時の急ブレーキテスト
このテストでは、3列シートのミニバンを使用。助手席に3点式ベルト着用の女性ダミーを搭載し、それに赤ちゃんダミーを「抱っこ」させています。後席にも子どもダミーを「そのまま着座」させ、時速40Kmからの急ブレーキを試みるものです。なお、運転席には男性ダミーを搭載し、テスト車の速度と急ブレーキ操作が何度も繰り返し再現できるよう、自動運転システムも採用しました。
急ブレーキの瞬間!前席で女性ダミーに「抱っこ」されていた赤ちゃんダミーは投げ出され、ダッシュボードに頭部や身体を打ち付けた後、座席下に転落してしまいました。
さらに後席で「そのまま着座」の子どもダミーも投げ出され、前席シートバックに頭部を打ち付けた後、車内後方に押し戻されていました。傷害値データによると、チャイルドシート使用を1とした場合、前席の「抱っこ」ダミーは約7倍、後席の「そのまま着座」ダミーは約5倍にも相当することが分かりました。

写真2 急ブレーキの瞬間!前方構造物に激突する前席の「抱っこ」赤ちゃんダミーと、後席の「そのまま着座」子どもダミー
「抱っこ」の危険性を検証する衝突テスト
このテストでは、助手席と後部左席に3点式ベルトを着用した女性ダミーを搭載し、それぞれに赤ちゃんを「抱っこ」させ、テスト車を時速50Kmでコンクリートバリアに前面衝突させるものです。同じく、運転席には男性ダミーを搭載し、車内と車外には高速度カメラを設置。カメラアングルを確保するため左側ドアすべてを取り外し、サイドインパクトビームを取付けることで車体が不自然に潰れることも防ぎました。
衝突の瞬間!大音響とともに前席エアバックが炸裂し、助手席で女性ダミーに「抱っこ」されていた赤ちゃんダミーは投げ出され、助手席エアバックに突入していました。
後ほど高速度カメラや壊れた車両で確認すると、赤ちゃんダミーの両足がダッシュボードを突き破っていることが分かりました。これは頑強なダミーの足によるものですが、実際の子どもなら足の方が負けてしまうはずです。
さらに後席で女性ダミーに「抱っこ」されていた赤ちゃんダミーも前席シートバックを突き破り、車内後方に投げ飛ばされていました。
全席シートベルトが義務化されました。この法律の目的は、車内すべての乗員の安全を守ることにあります。チャイルドシートの使用は、保護者に課せられた子ども達への義務であり、子どもに対する躾の一環でもあるのです。

写真3 衝突の瞬間!投げ出される赤ちゃんダミーとベルトに守られる女性ダミー






